FOOD SAFETY

輸入カップの食品衛生法 ── ポジティブリスト制度で、店は何を確認すればいいか

「海外のカップって、衛生面は大丈夫なんですか」── 見積もりの前に必ずと言っていいほど聞かれます。答えは「制度に適合していれば大丈夫。ただし確認すべきことがある」です。2025年6月から完全施行になった器具・容器包装のポジティブリスト制度を、飲食店の立場で必要な範囲に絞って書きます。

先に結論です。2025年6月1日から、PP・PET・紙コップの内側の樹脂層を含む合成樹脂製の食品用容器は、国が定めたリストに載った材料だけで作られたものしか、製造・輸入・販売できません(食品衛生法第18条第3項・ポジティブリスト制度)。使う側の店がすることは1つ ── 仕入先に「ポジティブリストに適合している」ことを確認し、その情報(確認書)を手元に置いておく。海外の認証(FDAなど)は日本の制度の代わりになりません。

1. ポジティブリスト制度とは何か

以前の日本の制度は「使ってはいけない物質を決める」ネガティブリスト方式でした。2018年の食品衛生法改正で、「使ってよい物質だけを決めて、それ以外は使えない」ポジティブリスト方式に変わりました。

項目内容
根拠食品衛生法 第18条第3項。基準は「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)の別表第1
施行2020年6月1日。5年間の経過措置(既存製品の猶予)は2025年5月31日で終了。2025年6月1日から完全施行
対象合成樹脂製の器具・容器包装。PPカップ・PETカップはそのもの。紙コップも内側の樹脂コーティング(ラミネート)が対象
リストの中身基材(ポリマー)21種類、添加剤840件などが収載。これ以外の物質は、原則として食品に触れる部分に使えない
リスト外の物質個別に安全性審査を受けて追加。または食品に触れない層で、溶出が0.01ppm未満なら可
所管2024年4月から消費者庁(それまでは厚生労働省)

※ 2026年9月時点の制度概要。詳細は消費者庁の案内ページをご確認ください。

2. 誰に、どんな義務があるか

制度は「作る人・売る人・使う人」で役割が分かれています。店側の負担は実はそれほど大きくありません。

立場義務・やること
製造者(工場)リストに載った材料だけで作る。製造管理基準(適正製造規範)に従う。国内製造者は営業の届出。販売先に「適合している」情報を伝える
輸入・販売業者(当社)輸入時に検疫所へ「食品等輸入届出」を出す(食品衛生法第27条)。工場から適合の情報を受け取り、販売先(店)に伝える
飲食店(使う側)法律上、書類の提出義務はありません。ただし適合品を使う責任はあり、保健所の立入検査や、百貨店・イベント主催者・フランチャイズ本部から「適合の確認」を求められることがあります。確認書を手元に置いておくのが実務上の答えです
ここが大事です。「確認しなさい」と言われたときに、仕入先が適合の情報を出せるかで店の対応が決まります。カップを買う前に「ポジティブリストの適合確認書を出せますか」と一言聞いてください。出せない業者からは買わないほうが安全です。

3. 輸入のときに何が起きているか

海外のカップが店に届くまでに、法律上のチェックが1回入ります。

  1. 工場が材料の適合を確認する ── リストに載った基材・添加剤だけで製造。適合を示す書類(確認書・材質証明)を発行
  2. 輸入者が検疫所に届け出る ── 「食品等輸入届出書」を提出。器具・容器包装も食品と同じ届出の対象です
  3. 検疫所が審査する ── 書類審査。必要に応じて検査命令・モニタリング検査(告示370号の材質試験・溶出試験: 重金属、蒸発残留物、過マンガン酸カリウム消費量など)
  4. 通関 → 国内へ ── 届出済の証明が出て、はじめて国内で販売できます

当社ではこの手続きをすべて当社で行い、店には「届いたカップを使う」だけの状態でお渡しします(ご注文の流れ)。店が個人輸入で直接カップを仕入れる場合は、この届出を店自身が行うことになります。届出なしで輸入した容器を業務で使うことは法律違反です。

4. 店が手元に置いておく書類

書類何が分かるか誰が出すか
ポジティブリスト適合確認書この製品がリストに載った材料だけで作られていること。これが最重要製造者(工場)→当社→店
材質証明・成分情報基材(PP・PETなど)と主な添加剤の種類製造者
溶出試験・材質試験の成績書告示370号の規格(重金属・蒸発残留物など)に適合していること検査機関(工場または輸入者が依頼)
食品等輸入届出済証(控え)この輸入分が検疫所に届け出られ、受理されたこと輸入者(当社)

保健所や取引先から聞かれるのは、ほとんどが1番目の適合確認書です。当社ではご依頼に応じて書類をご用意します(発行に数日いただくことがあります)。よくある質問にも記載しています。

5. よくある誤解

誤解実際
「FDA(米国)やLFGB(ドイツ)の認証があれば日本でも使える」別の制度です。日本で使うには日本のポジティブリストへの適合が必要。海外認証は参考にはなっても代わりにはなりません
「紙コップは紙だから対象外」紙そのものは対象外ですが、内側のPE・PLAなどの樹脂コーティングは対象です。実質、紙コップも確認が必要です
「経過措置があるから、まだ大丈夫」経過措置は2025年5月31日で終わりました。いまは完全施行です
「輸入代行に頼めば店には関係ない」届出の名義人(輸入者)が誰かで責任が変わります。誰が輸入者になるのかを契約前に確認してください
「安いカップは危ない」価格と適合は別です。適合品でも工場直送なら安くできます。確認すべきは価格ではなく書類です

6. 当社の対応

当社が扱うのは、日本向けに製造している工場のPP・PET・紙カップです。輸入届出は当社が行い、適合の情報は工場から受け取って、ご依頼に応じて店にお渡しします。素材ごとの特徴はPETとPPの比較、紙コップの記事に、価格は料金ページにすべて公開しています。

「書類を先に見てから決めたい」というご相談にも対応します。カップの注文が決まっていなくても、聞いていただいて構いません。

7. カップを仕入れる前のチェックリスト

  1. 仕入先に聞く ── 「ポジティブリストの適合確認書を出せますか」
  2. 輸入者を確認する ── 誰の名義で検疫所に届け出るのか(業者か、自店か)
  3. 紙コップも確認する ── 内側の樹脂コーティングが対象
  4. 書類を保管する ── 適合確認書は、保健所・取引先から求められたときに出せる場所に
  5. 海外認証だけで判断しない ── FDA・LFGBは日本の制度の代わりにならない

よくある質問

海外製のカップを飲食店で使っても法律上問題ありませんか?
問題ありません。ただし、食品衛生法のポジティブリスト制度(2025年6月1日完全施行)に適合した製品で、輸入時に検疫所へ食品等輸入届出がされていることが条件です。店側は、仕入先から「適合している」情報(確認書)を受け取って手元に置いておけば、保健所や取引先から確認を求められても対応できます。
ポジティブリスト制度の対象はプラスチックだけですか?
対象は合成樹脂製の器具・容器包装です。PPカップ・PETカップはそのまま対象で、紙コップも内側の樹脂コーティング(ラミネート)が対象になるため、実質的に紙コップも確認が必要です。
FDAやLFGBなど海外の認証があれば日本でも使えますか?
使えません。海外の認証は別の制度で、日本で使うには日本のポジティブリストへの適合が必要です。海外認証は参考にはなりますが、代わりにはなりません。
飲食店に書類の提出義務はありますか?
法律上、店が行政に書類を提出する義務はありません。ただし適合品を使う責任はあり、保健所の立入検査や百貨店・イベント主催者・フランチャイズ本部から適合の確認を求められることがあります。適合確認書を手元に置いておくのが実務上の対応です。
自分で海外から直接カップを輸入する場合はどうなりますか?
店自身が輸入者となり、検疫所への食品等輸入届出を行う必要があります。届出なしで輸入した容器を業務に使うことはできません。当社経由の場合は、届出と書類の手配をすべて当社で行います。

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